東へ Ep95
研修会は一年を通して3回開催され、回を重ねる毎にスキルアップしていくようになっていました。
しかし、この3回だけで他人様の体を施術するには、全く不十分でした。
そのために、研修会のない月を利用して希望される方に集まってもらい勉強会をするようになりました。
東京でも研修会が開かれ、勉強会もされていたので私自身の勉強のために見学に行くことにしました。
始発の新幹線に乗り、スマホを頼りに山手線、池袋線と乗り継いで何とか時間前に会場へ着きました。
流石に東京です。沢山の参加者が時間前に来られていました。
始まって暫くした頃に白髪交じりの女性が一人遅れて来られました。
勉強会もペアを組んで互いに施術をしあいます。
遅れて来られたのでペアになる相手が居ません。
見学者の私がお相手することになりました。
この女性をYさんと呼ぶことにします。
Yさんに足の末梢施療をしてもらうと研修会卒業組と聞いていましたが練習不足でまだまだ未熟なことが分かりました。
説明しながら足の末梢施療施をしてあげました。
次に腹部の施術が始まったのでまず私がYさんのお腹を同じように説明しながら施術をしました。
実は、足の末梢施療をしている時からYさんのお腹がグルグルと鳴っていたのです。
Episode21「腹の虫」でも書いているように殆どの方が足を擦ると副交感神経が優位になり胃腸が動きだします。
Yさんがトイレに行きたくなったと言われて出て行かれました。
暫くすると帰ってきて、「大量の便が出ました!」とスッキリした顔で言われました。
オルゴン療法を受けると体の中に溜まった老廃物などの排出機能が高まります。
「悪いものが全部出たんですよ!」と言いながら座位で肩や背中をリングで優しく擦ってあげました。
Yさんが肩越しに言いました。
「先生大阪から来られたんでしょ!」
「甥が大阪に住んでいるんですが春に交通事故に巻き込まれて、頚髄損傷で半身麻痺になっているんです。」
「お盆休みを利用してお見舞いに行くつもりなんですが治療してあげようと思うんです。」と言われました。
「今のYさんの技術なら危険なのでやめておきなさい!」と忠告しました。
するとYさんが
「それなら私と一緒に行ってもらえませんか?」と言うのです。
仕方がないので「それでどこに住んでおられるのですか?」
と聞くと、スマホを出してこの住所ですと見せてくれました。
見た瞬間に背中がゾクゾクとしました。
今は、尼崎市の塚口町で開業していますがその前は、大阪市平野区長吉出戸と言う所で開業していました。
地下鉄出戸駅から歩いて行けるところです。
見せてもらった住所は、この平野区長吉出戸だったのです。
こんな偶然があるのかと驚き、これは天から行きなさいと言われているような気がしてYさんとお盆に行くことを約束しました。
Yさんが大阪に来られて、地下鉄に乗り何年も通った出戸駅に久しぶりに降り立ちました。
甥御さんの家は、直ぐに分かりました。
挨拶を済ませて、足の末梢施療から始めました。
やはり、麻痺側の感覚神経もやられているようで痛みは感じられませんでしたが健側の足は、極度に痛がられました。
手の末梢施療後に首以外の全身を施療しました。
施術後、体が軽くなり起き上がり動作などがしやすくなったと言われました。
私が甥御さんを施術したのは、この一回限りです。
その後、Yさんが大阪に来るときには、治療院に寄ってくれました。
もう二度と行くことはないと思っていた、平野区長吉出戸へオルゴンリングを携えてまた行くことになるとは、思いも寄らない展開でした。
Yさんと私は、目に見えない糸で結ばれていたような気がします。
但し、色は赤ではありません。
To be continued.